チャプレンのブログ・ALSなんか大嫌い

アメリカでチャプレンとして働いています

元気な姿を記憶に残したい

 

Nさんは86歳の黒人男性。

アルツハイマーの末期でホスピスケアを受けられている

 

長年、教会の牧師として、神と人に仕えてこられた

奥さんも結婚して60年以上 一緒に教会で共に奉仕をされてこられたという

 

奥さんは、穏やかな話し方で

ご主人のNさんがいつ亡くなるのかわからないけれど

心の準備はできていると言われた

とても落ち着いておられる

 

ご夫婦には10人以上の子供がおられて

そのうちの一人の息子が 近くに住んでいるのに見舞いに来ない

チャプレンから 息子に来るようにと電話と入れてもらえませんかと

お願いされた

 

次の日、その息子さんに電話をしてみた

「お父さんの状態は日に日に悪化していて、

 いつ亡くなれれるか時間の問題のようです。

 あなたがお父さんに顔を見せに来ないと心配しておられるのですが、

 どんなお気持ちでおられるのですか?」

 

そう尋ねてみると、息子さんは

「父親の病気を認めたくないとか、否定しているとか

 そういうのではないんですが・・・

 僕は、父親が元気で活躍していた姿を記憶に残したいんです

 今の父親の弱っている姿ではなく。」

「だから、家族がみんなが 来い来いと言うのですが

 どうしても行く気になれません。

 でも、絶対行かないとか決めているわけでもないので

 気が変わったら、行くこともあるかも・・・・」と言われた

 

私は 彼の考えを尊重して

「そうなんですね。お父さんの元気な姿だけを記憶に残したいんですね

 お母さんや家族のお気持ちもあるので、複雑だとは思いますが

 話してくださってありがとう

 気が変わって、会いたくなったら、行ってあげてくださいね」

そう言って、電話を切った

 

数日後、Nさん宅を再び訪問させていただいたら、奥さんが

「『チャプレンに電話をよこさせたんだね』と息子に言われました

 まだ、息子は来ないんですよ

 彼が来たら、家族みんなでサポートしようと思って

 いつ来てもいいように心の準備をしているんだけど。。。

 どうしたらいいのかしら・・・」

 

「息子さんは ご自分の考えがあって来たくないとおっしゃっているので、 

 無理強いせずに、彼の気持ちを尊重してあげることじゃないでしょうか」

と言うと、

「そうですか。気持ちを尊重した方がいいですかね・・・」とポツリ

「病気の時の記憶なんて、あっという間に無くなって

 元気な時のことしか思い出に残らないと思うんだけどねえ。

 長男がガンで2年間闘病して亡くなったんですけど、

 その時の病気姿の息子なんて、記憶から消えてしまって

 とても元気な時のことしが 思い出せないのに」

 

奥さんは納得がいかない様子だった

そして

「本人が来たくないのだから、仕方がないわ

 気が変わることを期待して、待ってみます」と言われた

 

時々、このようなことが起こる

家族が病気になると、遠ざかってしまう人

ーどう接してよいのかわからない

ー悲しすぎる

ーそんな病気の姿を見たくない

理由はそれぞれだ

 

家族が重い病気にかかられて、死期が近づいたとき

あなたなら、どうしますか?