チャプレンのブログ・ALSなんか大嫌い

アメリカでチャプレンとして働いています

悲惨な死に思うこと

 
当直の夜、急に、ハッと目が覚めて ガバっと飛び起きた。
 
時計を見ると 夜中の2時45分。
 
「ああ、やっぱり緊張しているんだな~。 もうちょっと寝なければ、明日の仕事にひびく・・・・・」
 
そう思って、またウトウトとし始めたところに、ページャーが 『ピッピー、ピッピー』 と 鳴り響いた!
 
時計を見ると、2時57分。 あれからたったの15分だ・・・
 
ページャーを見ると ER(救急)からの Full Trauma (生死に関わる緊急事態) の急患の知らせだ。
 
15分以内に ERに行かねばならない。 
 
チャプレンはトラウマ・ティームの一員として 必ず患者や家族をサポートする。
 
急いで支度をして ERに向かう。
 
 
行って見ると、2人の医者と数人の看護士らが ドラマさながらに 患者を囲んで救命活動をしている。
 
邪魔にならないところから 様子を見守りながら、横の看護士に事情を聞き 把握する努力をする。
 
命に関わる状態とは、やはり事故なのだろうか??
 
 
この若い男性は、大学の3階建てのビルの横で 横たわっているのが発見された。
 
間違って落ちてしまったのか、飛び降りたのか・・・・
 
目撃者もいないらしく、詳しい事情はわからないが、発見されたときには意識があったものの、
 
救急車の中で、心肺停止になったらしい。
 
私が到着して、ものの5分ほどで、死亡が確認され、医師たちが集中治療室から出てきた。
 
なんと、あっけない死。
 
ポケットにあった財布から 身元確認がはじまり、家族に連絡を取る。
 
70才ほどと見られる病院責任者の女医が おちついた声で 家族に電話をかけていた・・・・
 
 
私は、だれもいなくなった治療室に入って、亡くなったばかりの患者のところに行った。
 
彼が、どんなことを考えて生きてきた人なのか、
 
自殺だとすれば、彼にはどんな苦しみや悲しみがあったのだろうか・・・・・
 
今、死亡して彼の魂はどうなっているのか・・・・・
 
最後に彼のために 神様のあわれみとなぐさめを祈らずにはいられなかった。 
 
 
遺体は、本当に悲惨な状況だった。
 
血だらけで 頭や口から出た血が、ポタポタと床に落ちている。
 
うつろに開いた目は、とても悲しそうに宙を見ていた・・・・・
 
思わず、彼の腕に手を置いて 静かに祈り始めた。
 
まだあたたかくて、まばたきをするのではないかと思うほどだ。
 
疑問の残る件であるために、警察が調査するまでは 遺体をきれいにすることは許されない。
 
残酷な姿のまま 横たわっている若者の遺体は、私にはとても近しく感じられた。(理由はわからないけど・・)
 
会話ができそうな感じすらする。
 
悲しみというより、厳粛で、残念というか、申し訳ないというか、なんとも表現しがたい気持ちになった。
 
しばらく 神様に祈りをささげて 部屋を出た。
 
 
後に、彼が以前にも同じ方法で自殺未遂をしたことが判明し、自殺という判断がされた。
 
私達の命が 力強いものでありながら、もろく壊れやすいものでもあるのを目の当たりにした。
 
生きるということが奇跡であると同時に、死ぬということも奇跡だと思う。
 
 
最期を目撃したチャプレンとして、家族が病院にこられたら お話させてもらおうと思っていたが、
 
とうとう丸一日が経っても 誰もあらわれなかった・・・・・・