チャプレンのブログ・ALSなんか大嫌い

アメリカでチャプレンとして働いています

死なせてほしい


「このまま森の深いところに連れて行って 一人で死なせてほしい・・・」
 
75歳のAさんは 静かに私の顔をみて 
悲しむことも取り乱すこともなく言った
 
数年前に脳腫瘍をわずらい 3年ほどかけて
言語障害、記憶喪失、歩行、日常生活を取り戻した
 
それなのに 
今度は同じ脳のところで 今回は脳梗塞で倒れ、左半身が麻痺
そのリハビリのために 私の施設に入ってこられたのだった

熱心なカトリック信者であるAさんは
「自殺すると地獄に行くと教えられたけれど、本当にそうなのですか?」と
真剣な表情でくいいるように 聞かれる

再び同じような苦労をするくらいなら、このままいなくなってしまいたい
神様はなぜ私にこんな苦しみを与えられるのでしょう?
慎ましやかに暮らしていただけなのに、何が神を怒らせるのでしょう?

Aさんの心は 霊的な苦しみからの叫びに満ちている
誰に問いかけても 明確な答えはなく 
生きることへの不安と 疲れでいっぱいのようだ

「いつもリハビリで励んでおられるのを見ていますが、
 そのようなお気持ちだと リハビリを受けるのもおつらいのでは?」
と聞くと、
周りの期待に応えて一応は励んでいるけれど、止めたい気もあるといわれる

その大変さを否定したり、軽減するのではなく、話をじっくりと聞いて、
つらさを認め、共感する努力をする

すると聞いているうちに Aさんの言葉の中から
キーワード(鍵となる言葉)が浮かび上がってくるのがわかる

Aさんは、機能が失われた自分に価値を認めることができないようだ

アドバイスを求められたので
「お孫さんたちは ○○ができるから、Aおばあちゃんが好きと思っているの   ではなくて、優しいAおばあちゃんがいてくれるから 好きだ~と思ってくれているのでは?」と存在の価値について話させてもらった

しばらくじーっと聞いていた彼女は
和らいだ表情になって
「なんだか気持ちが楽になったわ
 時間をとって話を聞いてくださってありがとう」と礼を言われた

1度の会話で どれだけの心の変化が起こるのかはわからないが
多少、重荷がとれたように見受けられた

いつまでおられるかわからないが、
これからも対話を続けて、支えになれればと思っている



先日のハイキングの写真から

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