ハネムーン
結婚式を挙げた元旦の夜、私たちは新婚旅行に出かけた。
はじめは、すぐにアメリカに引っ越すのだから、それが新婚旅行の代わりだと思っていた。
しかし、母がせっかく日本で結婚するのだから、記念に日本で新婚旅行にいくようにと進めてくれた。
それで、選んだ場所は、長崎。
母の故郷でもあり、キリスト教の歴史も学べるため、ジムが興味を示した。
夜、京都駅から夜行列車の寝台車に乗って次の朝に長崎到着という行程。
寝台車は、部屋の両側に２段ベッドがあるという設定で４人部屋。
当時、国鉄では「フルムーン」というキャンペーンが行なわれており、
壮年の夫婦がカップルで旅行を楽しめるプロモーションがたけなわだった。
私たちと同じ部屋には、その「フルムーン」チケットを利用して、あちこち旅行を楽しんでいる60代の夫婦。
特に奥さんの方が、「今日結婚式を挙げたばかりの、しかもダンナさんが外人さん！」と言って、
かなりめずらしがられ、長時間なれそめを話すことに・・・・。
ジムは疲れているので、先に失礼と言って 上の段に上って早々寝てしまったのだった。
さて、長崎では、平和記念公園、グラバー邸、26聖人の記念碑などを散策した。
はじめて一緒に旅行をしてみて、ジムは旅行が大好きだと言うことがわかった。
彼は朝早くから起き、ロビーなどで情報を収集し、地図を見て、1日の計画を立てる。
私には思いつかないような楽しいことを盛り込んでくれて・・・。
ただ、任せてついて行けばいいだけだ。
お金のなかった私たちは、もっぱらラーメンやマクドナルドで食事を済ませた。
お金なんてなくても、一緒にいられるだけで楽しかった。
２泊３日の長崎旅行を終えて飛行機での帰り道、私たちは始めて喧嘩をした。
記念すべき第１回目の喧嘩だと言うのに、原因が何だったのか、私はもう忘れてしまった。
ジムは、意外とこういう細かいことを覚えている人だったので、
彼がここにいたなら、その原因をはっきり教えてくれただろうに。
ジムは、この長崎旅行がとても楽しかったようで、
「10年後に、結婚10周年記念として、また二人で長崎に来よう！」と言った。
10年後には それはかなわなかったが、20年後に二人で長崎に行った。
もうジムと旅行することもできないのかと思うと、さみしい・・・。
