チャプレンのブログ・ALSなんか大嫌い

アメリカでチャプレンとして働いています

シニアセンター

イメージ 1

                シニアセンターのイメージ

両親が住んでいた町は、当時人口がたったの6000人。
ほとんどが退職老人で、主だった産業もないため、仕事と言うものがない。

ジムと私は、この町にずっと住み続けるつもりはなかったが、
ジムがどの大学に行くかを決めるまで、しばらくのんびり過ごすことになった。

それで、ジムの両親が週に2-3度利用しているシニアセンターの昼食サービスで
皿洗いのボランティアでもしようということになった。

アメリカでは地方自治体が立てたシニアセンターや 教会のホールを使って、
Loaves and Fishes (パンと魚)というキリスト教の非営利団体が 昼食サービスを行なっている。

http://www.loavesandfishesonline.org/

60歳以上なら 昼食が2ドル程度で食べられるのだ。
年を取って体が弱ると、出かける必要もなく、社交性もなくなっていくが、
週に5日間 安くで昼食を提供することで、毎日 きちんと着替えをし、
友達と会うために出かけるきっかけをつくり、お年寄りの健康と自立をサポートしようと言うもの。
そのセンターには100人ほどのお年寄りが毎日見えていた。

自分で運転できない人は、できる人が迎えに行く、遠方の人は、マイクロバスで送迎があった。
老人があちこちから、ぞくぞくと集まってくる。

週に3日だったか、私たちは食前にテーブルセッティングを手伝い、食後に皿洗いをした。

その70代の若手の女性たちが 早めに来て、同じようにボランティアをしていた。
彼女たちに加わって話を聞いていると、耳を疑うようなことばかり!

「(異性をさして)あのAさん、きっとあなたのことが好きなのよ。あなたのことばかり見ているもの。」
「そうかしら、そんなことないわ。 わたしはBさんの方が気になってるの。」
「あら、じゃあ、はやくアタックすればいいのに。私が手伝いましょうか?」
「だめよー。恥ずかしいわー! でも、彼って素敵だと思わない?」

なんだか、中学生の時によく耳にしたような、会話ばかり。

伴侶に先立たれたおばあさんたちは、毎日きれいに着飾ってセンターに来、嬉々としてこんな話をしている。
なんとも ほほえましい光景ではないか!
彼女たちは、少女のように恋心をもって、異性を意識していた。

「恋愛に年齢なんて」の世界がそのまま繰り広げられていたのだった。

さて、毎回ランチのあと、合唱したり、トランプをしたり、アトラクションが催されていた。
その日は、ダンス。
ピアノの得意な80代のおばあさんが、バンバンとにぎやかな曲を弾き始めた。
すると、男性は妻や 女性にダンスを申し込んで 次々に踊りだす。

私が皿洗いを終えて、ほほえましい情景を見ていると、私に向かって歩んでくる一人の男性が・・・。

その人は、ロイ、92歳。背が高く180センチはあるカクシャクとした男性だった。
「踊っていただけますか?」とジェントルマンらしく、私に右手を出した。

私は、「えー?」と、戸惑いながらも、ロイに手を引かれてフロアーに。
実は私の父は社交ダンスの先生だったが、恥ずかしいことに基礎の基礎しか習っていないのだ。
突然、ダンスと言われても、ステップどころの話ではない。

お恥ずかしいことだが、音楽にあわせて、それらしくロイと踊った。
周りの老人たちは、「ほら、ロイが日本から来た若い女の子と踊っているぜ」みたいに注目している。
なんだか気恥ずかしくて、真っ赤な顔になってしまった。

やっとのことで、1曲が終わり、ロイが私から手を離した。
ジムがその光景を見ていて、
 「ロイは踊っていると言うよりも、リエにぶら下がっているという感じだったよ!」と笑った。

かくして、アメリカ上陸初の記念すべき私のダンスはロイに奪われた。

ジムと私には、両親しか知り合いがいないため、これから数ヶ月間は、両親の紹介で
たくさんのお年寄りと友達になった。