チャプレンのブログ・ALSなんか大嫌い

アメリカでチャプレンとして働いています

怖い出来事

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父の牧草地では約30頭の牛を放牧していた。

ほとんどの牛が人に慣れていたので、動物好きの私は、撫でたりしてかわいがっていた。

牛たちは、草をひとしきり食べると、川辺に行って座って反芻(はんすう)する。
いったんは飲み込んだ草を胃から口の中に戻し、くちゃくちゃ噛むのだ。

私はその日、そうとう暇をもてあましていたのだろう。
牛と一緒に川辺に座り、彼らに話しかけたり、撫でたりしていた。

一体、何回ぐらいくちゃくちゃ反芻するのだろうと、数えてみると、
ほとんどの牛が示し合わせたように、97、98回 くちゃくちゃやってからゴクンと飲み込んでいる。
牛の専門家たちは、知っているのだろうか、我ながら すごい発見だ。

さて、あるとき、父とジムと私は、牧草地で作業をしていた。
ふと見ると、新入りで立派な角をもった大きなブル(雄牛)が 5,6メートル先で 私をにらんでいる。

ブルは 頭を下げて 下から私をにらみ、口を開け舌を出して 鼻息を荒げ、ものすごいギョウソウ。
おもむろに前足で、ガッ、ガッ、と土を蹴り、今にも突進という構えをして私に敵意を向けている!

私は、恐怖のあまり、足が凍り付いて、声も出ない。
ライオンに狙われた カモシカは こういう気持ちなのだろうか。

すると、ジムがすぐにその状況を見て取って、「これは まずい!」と
農作業用の大きなフォーク(なんと言う名前の道具?)を投げると、ブルの前の土に刺さった。

ブルは邪魔が入って、殺意が途切れたのか、それ以上、私を威嚇することはなかった。

私は闘牛士でもないし、赤い服を着ていたわけでもないのに、どうしたことだろう。
勘違いをするのもいい加減にしてほしい。
しかし、彼らは理屈を通り越した 動物的直感で動いているのだから、理由を聞こうにもわからない。

とにかく、時々このことを思い出すと、今でもゾーとしてしまう。

恐怖におびえる新妻を助けてくれたジムは、やっぱり私のヒーローだ。