チャプレンのブログ・ALSなんか大嫌い

アメリカでチャプレンとして働いています

父の信仰

イメージ 1

アメリカ移住生活もほぼ2年し、両親の生活も随分落ち着いた。

秋のある日、父が私たち家族に 「パパ、今度のクリスマスに洗礼受けるわ。」と言った。

私たち家族は、みんなクリスチャンで、父だけがクリスチャンではなかったために、

いつか信仰をもってくれるようにと祈っていた。


私は中学の頃教会に行き始めたが、父は一切反対することなく、かえって協力的で、遠くの教会でもたれた

集会の帰りが遅くなったりすると 嫌な顔少し見せずに、駅に迎えに来てくれたりしていた。

父にもキリスト教をわかってほしくて、子供ながらに、父に伝道したものだった。

「イエス様を信じる人は、天国にいけるねんでー。」私が言うと、

「自分を信じた人しか天国に入れないなんて、イエスさんって、心の狭い神さんやなぁ。」とか言って、

真剣な私の気持ちをやきもきさせたものだった。


父は、家を持ち、健康な妻と娘2人を養って、好きなゴルフ、社交ダンス、釣り、ビリヤードを楽しみ、

人生を楽しんでいたため、あまり悩みなどは無かった様子。

(私としては、父が戦争に行って、日本のために命をかけた経験が、彼をそうさせたのだろうと思う。)

これと言った悩みも無かったようだし、信仰なんて考える必用がなかったのだろう。

いつもニコニコ人当たりもよく、家でもプロレスを見て楽しそうだった。


そんな父も「退職したら一緒に教会に来てほしい」と母に約束させられ、その要望に答えて、

一応は通っていたものの、居眠りばかりして、母を困らせていた。

アメリカに来て、運転できない母を送迎して一緒に仕方なく教会に行く内に、教会の方々と親しくなり、

礼拝にも文句を言わずに参加するようになっていった。

私たちの知らないところで、父も聖書に触れ、神やイエス・キリストについて色々なことを考えたのだろう。

ある日、突然、「クリスマスに洗礼を受ける」と言ったのだ。

母も、私も、「えーーー!!!???」と驚いてしまった。(なんと不信仰な家族・・・。)

さっそく、日本の妹に「パパがクリスマスに洗礼受けはるし!」と電話をかけると、

妹は『あの父が自分から信仰を持つはずが無い』と思い込んでいたのか、

「洗礼って 無理矢理 受けさせるものじゃないやん。」と

まるで、母と私が嫌がる父をねじ伏せでもしたような言い方・・・。

妹が、父の希望で洗礼を受けることを理解するのには、少し時間がかかったが、彼女も驚いた。


妹の旦那は「僕、お父さんのこと、尊敬してたのに・・・。」

熱心なクリスチャンに囲まれていても 自分の好きな生き方を自由に貫いていた父が好きだったのに、

残念がっているという。


かくして、父は クリスマスに信仰を告白して、無事バプテスマを受けた。

父は64歳だった。

このときから、父の人生は、ますます充実していった。