チャプレンのブログ・ALSなんか大嫌い

アメリカでチャプレンとして働いています

結婚式



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牧師として 生まれて初めて 結婚式を挙げた

60代の患者さんとその婚約者は 6月に結婚式を挙げる予定だったが
仕事中に頭蓋骨骨折、その手術の際に 脳腫瘍ガンが発見された

脳手術を受けられ、そのリハビリで私の働く施設に来られたのだった

「この施設でぜひ結婚式をあげてもらえませんか?」
婚約者が 熱心に私に依頼された

挙げてもらえませんかったって、私自身牧師としての資格はあるけど
州に牧師として届け出てはいないので・・・・

それに 脳の手術をされたとなれば、意識障害とか、記憶障害とかの可能性もあるし
結婚のような重大なことを この時期に決めるのは いかがなものか・・・・

結婚も大事かも知れないけれど、健康を取り戻すことが まず大事では?

すごく躊躇していた

患者さん、家族、医者、ソーシャル・ワーカー、リハビリ専門家を交えた会議に
私も出て、状況を把握しようと努力した

聞いていて、このお二人が お互いに伴侶を病気で亡くされた後、
4年間に知り合って、去年からこの6月の挙式を予定されていたことがわかった
患者さんの姉妹も 二人のことを必死に応援して
「なんとか 希望をかなえてやってもらえませんか」と涙目で嘆願された

ここワシントン州キング郡の婚姻に関する法律について問い合わせてみたところ、
私が司式を務めるのに なんの支障もないことが判明

急きょ その3日後に 施設のチャペルで結婚式を執り行うこととなった

スピリチュアル・ケアー専門のチャプレンなのだから 
結婚式を執り行うことになるなどとは 考えてもいなかったため なんの準備もない

あわてて 牧師の手引書から結婚式の式文を参考に 準備にとりかかった

「たぶん、出席者は互いの近親者だけなので、4~5人」と言われていたが
結局ふたを開けてみると 20名の親族や友達が
脳腫瘍と脳挫傷というダブルの試練に見舞われた新郎と
その新郎を献身的に支えている新婦さんを応援しようと 駆けつけてこられた

お二人ともちょっとよそ行きのいでたちで 簡素な結婚式だ

約30分の結婚式は
古めかしく格式高い単語が ちりまべられた式文を 
一言一言 発音を間違えないように、しかも心を込めて
お二人や参列者に 目を合わせながら やらせていただいた

結婚式とは、参加者全員が 二人の幸せを思いやる暖かな気持ちの終結した場所
雰囲気全体が前向きというか、励ましと希望感にあふれているため
私も緊張しつつも、皆さんの暖かな気持ちに支えられて
とても心地よい雰囲気の中で 執り行うことができた

特に大きな失敗もなく、なんとか無事に終わることができて ホッとした

お二人とその家族には非常に感謝され、本当によかったと思う

式の後は 別室でささやかなパーティーで ケーキがふるまわれた

しかし、その間、私は婚姻法に基づいた 結婚証明書のサインや
立会人2名の署名を 定められた書類にサインしてもらったりで
気が気ではない

もしここで失敗して書類がきちんとしていないと
郡の役所で結婚が受理されない可能性もあるのだから・・・・

実はこの式の直前、郡役所の婚姻届けの課に電話して
「あの~ 私、これから初めて結婚式の司式をする牧師なんですが
 書類の書き方を指導していただけますか?」と問いあわせていたのだった

「あ~、そうなんですね。
 たいていは そういうことに時間はとれないんですが、
 初めてという牧師さんに限って、丁寧に指導させていただきますよ」
とのことで 丁寧に教えてもらっていたのだ   ホっ・・・

日本では宗教的な結婚式は 法的になんの効力もなく、
婚姻届けを役所に提出することで 正式に婚姻したこととなるが、
アメリカでは、宗教的な結婚式そのものが 法的意味があり、
この郡では 式を執り行った牧師が婚姻届けを提出しなければならないので
責任重大だ~

かくして、初めての結婚式は 終わった

これからもこういうことがあるのかもしれないことを考えると
よい経験をさせていただいたと思う

そして、患者さんの健康と お二人の幸せをこれからも祈っていきたいと思う