チャプレンのブログ・ALSなんか大嫌い

アメリカでチャプレンとして働いています

Kさんの信仰


半年ほど前、私の施設に Kさんが入居してこられた

90歳の紳士であるKさんは キャリアとしてはカリフォルニアやアリゾナで
バリバリ建設業の会社を経営されていたが(いわゆるジェネコン)
若い頃から 人には言えないような派手で自分勝手な生活をしていたらしい

ところが 退職を迎えられたころから、
父親が牧師だったということもあり、幼い時から教えられていた聖書の教えを
もう一度まじめに受け止め、回心されたという

いわゆる聖書のストーリー 「放蕩息子」と同じ状況

Kさんは、とてもきちんとした老人で、
礼儀正しいし、朝から窓辺のテーブルで朝刊を読んだりして
90歳にしては 非常に若々しいし、私はとても尊敬している

私が最もすごいと思うようになったきっかけは、
Kさんの同室者に対する愛のある接し方や 行動だ

施設では、入居者の状態が悪くなって、病院に移られたり、
状況が変わって家族のもとに戻られたりと 人の入れ替わりも多い

Kさんの同室者もしかり
これまで4~5人の同室者と付き合ってこられた

Kさんは私に
「私がこの部屋に住むようになったのには、神様の意図があると思うんだ
 私は 年をとって、もういろんなことはできない
 ここに来る前には 豪華な家に住んでなんの不自由もなかった
 でも、年を取って 介護が必要となり、息子がここに私を入れた
 もう、何かがほしいとか そんな気持ちは全くなくなってね
 
 神様がここに私を住むように導かれた意味があまりわからなかったが、
 最近よくわかるようになった

 それは、同室になる人のために祈ることなんだ
 はじめは 知らない者同士、気まずいこともあるけど
 その人の健康や家族のために祈っていると、自然と気が合うようになる
 
 すると、兄弟や家族みたいに思えてきて、
 夜中に起きると 毛布をかけてあげるし、「大丈夫かい?」と 声もかける
 
 人生の最後の生活の場として、
 神様がその人のために最善のことをしてくださるようにと祈るのが
 私に与えられた使命だと つくづく感じるんだ」

Kさんは 淡々と私に話をして
時には 同室者の様態が悪く、看護士の出入りが多くて 
一睡もできなかったと 真っ赤な目で 新聞を読まれている

90歳であられるのに、タブレットで電子本をたくさん読まれていて
時々、『インターネットの接続が悪いから、困っているんだけど、
どうすればいいのか 教えてくれないかい?』
『読みたい本がたくさんあって、時間が足りないよ』などと言われる

自分のことだけで 精一杯の人が多い中、
どの同室者にも信頼され、同室者の家族とも仲良くなるKさん

愛を語るのではなく、愛を毎日の生活で実践するそのお姿は
本当に尊敬に値すると心から思う