チャプレンのブログ・ALSなんか大嫌い

アメリカでチャプレンとして働いています

生きることの意味


93歳の女性Mさんが リハビリのユニットに来られて、
2か月になろうとしている

もともと自宅で介護ヘルパーの援助を受けながら 一人暮らしをされていたのだが、
転倒による骨折の手術後、リハビリに来られている

ところが、年齢がいかれていることもあり、
なかなか歩行訓練がうまくいかず、最初のころは精神的に落ち込んでおられた

Mさんは、音大を卒業され、
大きな教会のクワイヤーのディレクターとして活躍されていた模様
なんと30年間も40-50人からなるクワイヤーを指導されたのだ

ところが、自分の潮時を感じ、30年でピリオドを打ち、新しいことに挑戦

今度はプロの粘土陶芸家として、次の30年を過ごされたのだ
自分のアトリエと工房、そしてギャラリーを持ち、
彼女の作品は 全米の客のもとに買われていった

ところが、今は自分の足で立つことも歩くこともままならない

「自分で最小限のこともできないなんて、
 生きる意味を見出すことができないわ・・・
 人間は、生きる意味を見いだせない時点で 存在を消滅すべきよ
 なんの価値も見いだせないのに、生き続けるなんて 私には耐えられない・・・」

若い頃に離婚を経験され、4人の子供たちを育て、
その子供たちとの絆を大事にしようと買ったイリノイ州のコテージには
毎年自分が中心となり、子供や孫家族を大集結してきたけれど、
これから そのコテージにも行くこともできるのかどうかわからない

Mさんの気持ちは よく伝わってくる

最近は、リハビリの効果が少しなりとも現れてきて
遅々とした進み具合ではあるものの、前進と後退を繰り返しながらのリハビリ

私は毎日 Daily Prayer (日々の祈り)をプリントして希望者に届けているのだが、 
Mさんは、
「あなたのような方が 私のところに毎日来てくださる、これこそ私の希望だわ。 
 あなたの持ってきてくれる祈りを読んで、どんなに励まされていることか・・・」

凛として、知的で、自立心の強いMさんにとって
これから 神の定められた死の時が来るまで
再び自立した生活ができるようになるかわからない 非常につらい状態だ

チャプレンは 患者さんの答えの出ない難しい状態の中を
共に考え、祈り、語り合いながら 精神的・霊的・感情的なサポートを繰り返す

Mさんのつらいチャレンジは いつまで続くのだろうか・・・

彼女の心の中での、神との対話を これからも手伝いたいと思う



    美しい雪の中のフランクリン滝 (先日のハイキングより)

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