チャプレンのブログ・ALSなんか大嫌い

アメリカでチャプレンとして働いています

Cさんの使命感

患者のCさんは 60代前半の白人女性。
全身ガンでホスピスのケアーを受けられている

60歳以上のものだけが入居できるアパートで独居

彼女はガリガリに痩せて弱っておられるけれど、
自分のアパートでは歩行もできるし、
ちょっとしたものなら 料理したりもすることができられる

少女時代は大きな地主の親の元に生まれ育ち、裕福な生活をされていた
大平原の中には川が流れていて、
そこにある滝のそばで遊ぶのが夏の楽しみだったと言われる

彼女が一番好きだったのが、乗馬
家に自分用の馬がいて、その馬に乗って、野山を駆け回っておられた

しかし、名士の家ということで、その世間体を保つための
様々なプレッシャーが 家の中にはあったらしい

「そういう ゆがんだ環境に育つった子供はどうなると思う?
 姉は真面目で、すべて親のいいなりになっていたから
 精神的に壊れて、自殺してしまったわ
 
 私と弟は、適当にやって、ごまかして 親から逃げて
 どうやって、親から金をもらうかという感じで利用していた」

結婚され、娘を一人授かったが、結婚生活は続かず 離婚
仕事をしながら(ボーイング社)娘を育てられた

(余談だけど、シアトルにいると、
 ボーイングで働いているとか、働いていたという人によく出会う
 さすが、世界一の航空産業なのね・・・)

この娘さんには 2人の子供が生まれて 孫ができたわけだけど、
その下の男の子が 10代そこそこで麻薬中毒になってしまった

その子は麻薬に完全にやられてしまい、
親や周りの人に嘘をつき、金をもらう、もらえなければ盗む
なんとしてでも、麻薬を打たなければ、居ても立っても居られないのだ

家族からも見放され、ホームレスになって 時々Cさんのところに現れたという

Cさんは、いろいろな手を尽くし、彼を何度となくリハビリにも入れたが
結局はなしのつぶてで、最終的に2年前に Overdose 過剰摂取により
危篤状態が数日続いたのち、たったの24歳の若さで亡くなられたのだった

Cさんは 私が訪問するたびに このお孫さんの話をしては涙を流される
「あの子が天国に行けたかどうか、それだけが心配」

「あの子が子供の時には、いつも教会に連れて行っていたし、
 喜んで一緒に来ていた 
 何度も神様のことを聞く機会はあったのだから
 神様のことを信じてくれていれば いいのだけれど・・・」

「あの子が危篤で生死の間をさ迷っていた時、
 手を握って、ずっと神様のことを話してあげていたのよ。
 でも、無反応だから、聞こえていたのかのかどうかもわからない・・・」

Cさんは 自分が死んで、天国に行ったとき、
もし孫がいなかったら、それほどつらいことはないと 恐れを抱いておられる

Cさんの話を受け止めながら、
Cさんが孫のためにできる限りのことをしてあげたこと、
そして神様が彼女の祈りを聞いてくださっていたことを
思い起こさせて差し上げる


そんなCさんは 
町で麻薬中毒患者を見かけると、躊躇もなく 近づいていき、
ポケットに入れているキャンディーなんかを渡しながら、
気さくに話しかけ、
「神様は、あんたのことを 気にかけて、愛しておられるんだよ」と
声をかけるのだという

「私、早く死んで、天国に行きたいんだけど、
 どうしても数が月で死ぬなんて考えられなくて・・・ 
 春になれば、友達に車で外出に連れて行ってもらって
 ホームレスの若者にもっと声をかけてあげないと
 生きている間は それが私の使命だと思うのよね」

知能障害のあるアパートの隣人にも いつも声をかけて
何かと世話を焼いているCさん
ちょっと親分肌というか、頼りがいのあるおばちゃんという感じだ


神様は、彼女の希望を聞いて、春まで生きていることができるのだろうか

Cさんとの会話は、笑いもたくさんあって気さくな雰囲気で
訪問させていただいている・・・