チャプレンのブログ・ALSなんか大嫌い

アメリカでチャプレンとして働いています

Nさん


Nさんは 小柄な67歳のインド人男性
心臓病の末期でホスピス・ケアを受けられている

インド人と言っても、インド出身ではなく、フィジー島の出身
その昔、フィジーがイギリスの植民地だったころ
奴隷として多くのインド人が移住させられたらしい

私もアメリカに来てから、フィジー出身のインド人という人に
何度か出会ったことがある

Nさんは とても無口な方で、あまり話はされない
私が質問すると、Yes とか Noとか 言われるくらい

奥さんのPさんも インド人で、
二人は結婚して数年後の1980年ごろ
親戚をたよって アメリカに移住されてきた

ずっと建設業の肉体労働で 3人の子供を育ててこられたのだが、
10数年前から、心臓病になり、それが悪化して
余命6ヶ月を宣告されたのだ


チャプレンとして、このお宅を隔週で訪問している
信仰しておられるヒンドゥー教の話や 宗教的なお祭りのこと
それにインドの風習や 文化についてもいろいろ教わる

彼らの文化的な面からくるのだろうと思うが、
訪問すると、友人が訪ねてきてくれたという感覚で歓迎してくださり、
雑談的な話が多い

何気ない会話から、信頼関係が築かれ、
奥さんのPさんは 私に心を開いて
徐々に深い話をされるようになってきた

将来のこと、夫の病気のこと、
最近、夫がほとんど食事が摂れなくなって 心配なこと・・・

今日の訪問では、
「いつも来てくださってありがとう。
 夫が亡くなっても、友達として、これからも来てくれる?
 心から話ができる友達として、ずっと来てほしい・・・」と
涙を流しながら私をハグされた


実は、プロとして (どんな職業でもそうであるように)
公私を混同させることは許されておらず、
職業上 出会った患者さんやそのご家族と付き合うことはできない

たとえ、町で偶然見かけたとしても、
あちらから声をかけられれば別だが、
こちらから声をかけることさえ、はばかられるのだ

一応、
「ホスピスには グリーフケアの専門カウンセラーがいて
 あなたのことをフォローして助けてくださいますよ」
と返答したが、

「新しいカウンセラーじゃなくて、あなたに来てほしいの」
と言われる


ホスピスケアの流れとしては、患者さんが他界されると
グリーフ・カウンセラーにバトンタッチして
希望者には 専門的に個人やグループのカウンセリングが提供される
(最長1年半も 無料で)


アメリカのホスピスの良いところは
患者さんおの死後の家族カウンセリングまで含まれているところだ


さて、このご家族にはどのように対応するのが一番良いのだろうか
ご主人のNさんは 最近食事を受け付けないことが多くなり
死期が近づいているのがわかる

チームやボスと相談して、
スムーズにグリーフ・カウンセラーにバトンタッチできるまで
例外的に、訪問を持続することになるのだろうか・・・

それは、その時考えるとして、
今は、Nさんの魂のケアに専念しなければと思う