チャプレンのブログ・ALSなんか大嫌い

アメリカでチャプレンとして働いています

夫婦の愛情


先週、夜中の1時半に電話が鳴って起こされた

職場の看護士からの電話で
患者のPさんが亡くなられたので来てくださいという連絡

私はチャプレンとして24時間体制をとっており、
特に患者さんの死亡に関しては 個人的に無理だという事情がない限り
1時間以内に 駆けつけることにしている

2時半に職場について、Pさんの部屋に行ってみると
傍らで夫のMさんが 妻の手をとり、悲しみに暮れていた

Pさんは 80代前半
50代半ばから 痴呆症を患い、
この4年ほどは、重度の痴呆で 車椅子に座っていることしかできず、
話すことも、食べることもできない状態だった

夫のPさんは 一人で介護ができなくなったため、妻をこの施設にあずけ、
毎日朝から晩まで、一緒に過ごしておられた

一緒に食事をし、
一緒にテレビを見、
一緒に礼拝に参加し、
一緒に新聞を読む

Mさんは 常に彼女の車椅子を押して、普通に話しかけ 手を握っていた

「彼女は僕の命なんだ」
「妻は ドイツ語の先生だったんだよ」

周りのみんなに妻の元気だったころのことを話し、
まるで、彼女が痴呆のない普通の人のように接しておられた

看護士や介護士をはじめ スタッフはみな
「Mさんって 本当にいい夫だわ
 私の夫なら、絶対あんな風に愛してはくれない
 彼が本当にPさんのことを 心から愛しているのがよくわかる」と
うらやむ言葉も出てくるほど

亡くなったPさんの手を握りしめ、
「彼女は 僕の人生そのものだったんだ
 なぜ、こんなに早く逝ってしまったの?
 まだまだ一緒にいてほしかったのに、フェアーじゃないよ
 
 でも、もう彼女はここにはいないんだね
 天国に旅立ったんだよね」
 
そして、子供のように大きな声で泣き続けられた


Pさんにとって 妻を愛するというのは
言葉上のことではなく、毎日の生活の実践上、ごく普通のことで
恋人同士のように 手をつなぎ、となりにたたずみ
たとえ痴呆であれ、それを超えたところで純粋に愛し続けることのできる
深い絆で結ばれたご夫婦だったのだ

最愛の妻Pさんを失ったMさんは
これからどのようになって行かれるのだろう
深い悲しみから癒えることがおできになるのだろうか

信仰者であられるPさんが 神の慰めを受け止め
前進されることを 祈っている